CHAZEN三昧

アシュタンガヨガと禅のある毎日

何かが見えてくる

会うたびにイモートが絶賛していたドキュメンタリー映画『人生フルーツ』。ようやく観ることができた。公開されたのはだいぶ前なので、ご存知の方も多いと思うけれど、90才の建築家と87才の奥様の暮らしをほんわりとしたタッチで綴った作品。観る前から自分好みの映画であることは承知していたけれど、それ以上だった。観終わったあと、心に雑木林からの風が吹き抜けて、果実がたくさん落ちてきた。しばらくこのおいしい実を味わえそう。



『人生フルーツ』劇場予告編


ずっと観ていたくなるような二人の生活。
「彼女は最高のガールフレンド」と言わしめるすてきなパートナーシップ。庭で野菜・果物を育て、手間暇かけてつくるおいしいごはん。コンビニや大型スーパーではなく、長年よく知ったお店の人とやりとりしながらの買い物。毎日何通も出すかわいい手書きイラストの入ったハガキ。手作りの梅干し、ジャム、お惣菜、ケーキ......。ていねいで心のこもった手仕事。

そうそう、これが私の憧れる暮らし。
なんといっても家がいい。広いワンルームの平屋。ソファとかタタミとかなくて、ダイニングテーブルと仕事用のデスク。だらだらテレビを観たりすることはなさそうなおうち。

合わせて177才の二人は、介護という文字とは無縁そうだ。そりゃたまには病気だってするだろうけれど、あれだけ動いていたら認知症になっているヒマもないにちがいない。私が推測するに、今病院にたんまり集っている高齢者の多くは、毎日テレビ三昧の生活なのではないかと......。とにかく二人ともよく働く。業者さんを頼んだりしないでなんでも自分たちでやる。

いい言葉、見習いたいこと、いくつも出てきたけれど、いちばんグッときたのがコレ。

とにかく、自分一人でやれることを見つけてそれをやれば、時間はかかるけれども何か見えてくるから。とにかく自分でやること。


そうそう。それがアシュタンガなのよ。
と、なんでもアシュタンガに結びつける私は思ったのだ。なんでみんなアシュタンガがポーズの技術をマスターするものだと思っちゃうのかな。アシュタンガには勝敗もなければ、評価もない。ポーズ自体の完成は、練習を継続させるためのおもちゃみたいなもので、それ自体が目指すゴールではないのに。

ずっと続けていると、時間はかかるけれども何か見えてくるものがある。

そういうものなんだよ、アシュタンガって。
なんでもない日常の一部なの。

アシュタンガヨガに代わるものはいくらでもある。あるいは、すべての行いがヨガになりうる。
CHAZENで提供したいのは、どうやったらバックベンドが上達するかではなくて、アシュタンガの練習を通して、どのように人生をとらえ、どのように生きていくかをみつける場。

体を動かすヨガという行いをツールにして、インド思想からヒントをもらい、自分自身で何かを見い出すこと。それがアシュタンガヨガだと私は思っている。だから、マイソールスタイル! だから、毎日! なの。日常の一部として行うことでそれが可能になる。何ができても、できなくても、ただCHAZENに来て練習するだけ。


バックに流れる練習曲みたいなピアノの音楽と樹木希林さんのナレーションがいい。

風が吹けば枯葉が落ちる。枯葉が落ちれば土が肥える。土が肥えれば果実が実る。
コツコツ、ゆっくり。


人生はだんだん美しくなる。


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