CHAZEN三昧

アシュタンガヨガと禅のある毎日

発酵と贈与経済

静かな個人的発酵ブームが訪れていることはあっちのブログに書いたけれど、過日、発酵と仏教が通じている話を星覚さんへのメールにちょこっと書いといたんですわ。そうしたら星覚さんから、小倉ヒラク著『発酵文化人類学木楽舎刊がおもしろいとのお返事がきた。仏教そのものの話より食いつきがいい感じで。さすが星覚さん、私の目指す先を行ってる。そして、やっぱり発酵と仏教はつながってる。

というわけで早速、お山に行く荷物の中にこの本を忍ばせたのだった。
が、先述のとおり、火遊びに夢中で、ざっと読んだのは帰ってきてから。

確かにおもしろい。この本も小倉ヒラク氏も。
でも、斜め読みではなくじっくり読まないと、ほんとのおもしろさがわからない。語り口は軽妙で、まるでハナウタでも歌いながら書いたようなノリなのだけど、実はすごく濃いというか盛りだくさんというか、さまざまなジャンルの話がどんどん展開する。ヒラクくんの頭の中についていくには、それなりの知識や決意が必要だ。

たぶん私、ヨガ哲学の入門者が独自にバガヴァッド・ギーターを読んだらこんな感じ? くらいしかわかっていない。病原菌とかの研究をしている某嬢が、今までそっち方面の本ばかり読んできて、インド哲学とかぜんぜんわからないというその気持ちがわかる気がするわ。

真に理解するためにはさらに多くの書物を読まなければならないと感じた。たとえばレヴィ=ストロースとかマルセル・モースとかの文化人類学系や、「もやしもん」という漫画とか。今まで私が読んでこなかった本をね。

でも、その貧弱な理解度でも、確かに興味深いことがたくさん書かれているのはわかる。仏教につながるばかりか、田んぼでお世話になっている高坂さんの活動とか、ひいてはアフロのあの方の『寂しい生活』など、私がくんくん嗅ぎ回っている方面につながっているのだ。

今のところ私の手には負えないので、興味のある方はこの本を読まれたし。ちゃみこさんがもう少しおりこうになったら、再度このテーマで書いてみたいけど、今はこの本から一部引用させていただくので察してください(乱暴すぎる)。

空が鳥に贈り物をする。海が魚に贈り物をする。植物が動物に贈り物をする。その「贈与の交換」は止むことなく続けられ「生きているものの世界の環」がぐるぐると回り続けることになる。

で、「もやしもん」登場。

「君の営み 我々の営み 別々のようでいて同じなんだヨ」
「それぞれの輪ではあるが この世界は全てつながっているんだ」
「みんなみんなで一つの和なんだヨ」

発酵と自然界。発酵と人間社会。おもしろいね。

これまでの資本主義的な市場原理と違う、贈与の仕組みで動く世界を「ギフトエコノミー(贈与経済)」と呼ぶ。これはモースおじさん(*マルセル・モース)の言う「全体的給付」の世界観で形成される経済のこと。個人の損得を超え、お隣さんに気前よく贈り物をすることで回っていく経済のカタチだ。
それは別に夢物語ではなく、ボランティアや地域コミュニティ、そして家族のなかで当たり前のように存在している。


世の中は確実に変わろうとしている気がしてきた。
旧態依然のおじさんたちを見ずに、こういう人たちが醸すじわじわっとした発酵を待ちたいと思った。
いやいや待つだけではなく、自らが微生物となって発酵したい。

私がほんとは何をしたいのかが、だんだんわかってきたよ。とりあえず動いているうちにわかってきた。

数年前まではたぶん私は自分に手を焼いていたのだね。まずこの自分をおとなしくさせることが先決だったから、まずヨガであやしてやり、その後禅の子守唄を聞かせてやるうちに、気づいたらエゴがけっこうスヤスヤ寝ていてくれるようになった。

やっとスタートラインに立ったかな。


たまにはTSUKIでもながめてみた@お山

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ふだんは月も星も眺めるのは朝