CHAZEN三昧

アシュタンガヨガと禅のある毎日

物語の快楽

あれは9月のこと。
リトリートの報告記事に信濃追分駅のことを書きました。CHAZENのリトリートハウスはここからさらに車で10分ほどかかるのですが、最寄駅になります。

そうしたら、いつもイギリスでこのブログを読んでいてくださる某嬢から「信濃追分は私が好きな小説の舞台になっているんです!」って連絡がきました。それで軽井沢書店の「軽井沢が舞台の小説コーナー」で早速水村美苗の「本格小説」上巻を購入し、お山に泊まった夜にだけ読むことにしたのです。「嵐が丘」を下敷きにしているというのも実際に読んでみようと思った動機になりました。

分厚い上下の二巻なのですが、物語に入るまでのお話がめっぽう長くて、思わず後ろのページを繰ってどこから始まるのか確認してしまったほど。ようやく物語がスタートしたものの、登場人物がやたら出てくるばかりで若干退屈になってきたりして。信濃追分の朽ちた別荘と軽井沢の古い洋館が舞台になっている以外はさして興味も湧かず。ときどきは夜更かしして読んでいたにもかかわらず、上巻を読み終えたのは今月お山に行ったときで、4カ月がすぎていました。

ただ、そこはさすが。上巻の最後の最後になって下巻を読まずにはいられない展開になるわけです。次にお山に行く来月までは待てないので、下巻は東京で図書館に行くついでに借りてきました。返却期限までに読み終えられないだろうとは思ったのですが、とりあえず。

ヨーガ・スートラクラスの前ということもあり後回しにするつもりが、ちろっと本を開いてみたところ、もうその先を読まずにはいられないようなことが目に入るわけです。ちょうど金曜日だったこともあり、ほかのことそっちのけで読み続け、土曜日に読了してしまいました。しょっちゅう朝まで夢中になって本を読んでいた10代のころを思い出すほどの一気読み。外に出た時に現実世界が変わって見えるほど没頭しました。

戦後から現代に至る、まさに昼メロ的な「運命に翻弄され愛憎織りなす男と女」のお話は、こってりこてこてのシャバ世界なのですが、ここに入り込む感覚は以前と変わっていない。そりゃそうです。グルメ的なことに興味がなくなった今だって、おいしいものを食べたらおいしいと思うのです。ひさびさに味わう物語の快楽に身を委ねた二日間でした。

インド思想とは関係ない世界にどっぷり浸ったおかげで、こういう没頭とヨガで集中が高まることとの違いについて、ヨーガ・スートラクラスで考えることができました。どんなに遠い世界でも必ずここに帰着することになっております。

また愉しからずや。


f:id:chazenyoga:20200219211259j:plain
ストーブにあたりながら読んだ