CHAZEN三昧

アシュタンガヨガと禅のある毎日

「ニャ」について考える

jñāna というのは知識という意味をもつサンスクリット語です。そもそもがサンスクリット語の音をカタカナで表記するのには限界があるのですが、それはさておき、この語は特に要注意です。日本語で書かれた(翻訳された)文献のほとんどは「ジュニャーナ」「ジニャーナ」と表記してあります。

デーヴァナーガリーでज्ञと記される文字は、アルファベットで書くとjñaと表記されるので「ジュニャ」なのでしょうが、インドでそう発音しているのを聞いたことがありません。マイソールで私が習ったのは「ニャ」という音に近い。おそらくアルファベットでjとした音はかすかな音なのだと思います。ヨーガ・スートラのチャンティングでお手本にしている先生は「ニャ」の前に「ング」のような微妙な音が入るので、それが本来のjña の発音なのかと思うのですが、確かなことはわかりません。

それでいつもこの表記にハテナマークが灯っていたのですが、よく考えるとそれが日本語らしいカナ表記のように思えます。外来語をカナで表記する際の日本的やり方、文字ヅラ重視の日本的表記と考えれば妥当です。「ニャ」だとnyaと同じになってしまうということもあります(だからカナ表記はしたくない)。

ところがインドでも地域によって発音が異なるようで、ヒンディー語を話す地域では「ギャ」と発音するようです。まったくもってさらに複雑です。でも、権威ある日本の学者は「ギャ」は間違いで「ジュニャ」が正しいと主張されています。学会のヒエラルキーに組み込まれている先生方はもちろん、インドでサンスクリットを学んだことはない翻訳者が「ジュニャ」と表記するのは当然のことです。そこに組み込まれてない日本ヴェーダーンタ協会発行の本には、jñāna のことを「ギャーナ」と表記してありました。

CHAZENで読んでいる岩波文庫の「バガヴァッド・ギーター」は「ジュニャ」という表記ですが、あえてそれを「ニャ」と読んでいます。CHAZENはアシュタンガヨガをベースにしているので、「ギャ」ではなくマイソール地方の「ニャ」。そして、ヨーガ・スートラではサンスクリットのチャンティングをしますから、リアルに近い発音で。ニャのほうが音としてもかわいいしニャ。

ずいぶんオタクな話になってしまいましたが、ヨガの経典を読む人は心に留めておいてください。


さて、先日のギータークラスでは、ヨーガ・スートラを理解するのに重要なサーンキヤ二元論の萌芽となる考え方、見るものと見られるものについて話をしました(ここにニャが出てくる)。この部分、初めての人は脳みそがフリーズしてまぶたが閉じるか、めっちゃハマるかのどちらかです。ただ、毎年ここを読むころには参加者が淘汰されているので、難しくても挫折するポイントではなく、むしろ次につながるためのよい刺激になっている気がします。今タームはハマる率が高かったので、スートラクラスにも出るように勧めたらさっそく申し込みが......。座学がますます楽しくなっております。

次のヨーガ・スートラクラスは、印哲風味満載です。いつもは「インド思想」という感じですが、ここはガチで「インド哲学」。でも安心してください。一介のヨガ教師がそんな大それたことを話したりしません。いつものように、インドの哲人たちがどんな風に考えたかを紹介しつつ、プラクティスや日常にからめて話します。難しい理論自体は理解できなくてもまったく支障はありません。わからなくても道は啓けます。道(方法)は数多くあるので、自分に合う道を歩けばいいのです。

CHAZEN的な王道について言うと、こんな感じに上っていきます。
アシュタンガヨガ(マイソール)→ギータークラス→スートラクラス

次回、ガチのインド哲学的スートラクラスは27日です。ただいま準備の関係でご予約が必要となっております。前日の午前中までにお申し込みください。また、日曜祝日のマイソールに空きがあることもありますので、座学の前にドロップインでのマイソール参加もご予約を受け付けております。

www.chazenyoga.com


夏の間の山ボケからようやくインド思想モードにスイッチが切り替わり、今回の分校滞在にもお勉強道具を持ち込んでいますが、予報に反してお天気がいい......。外に出たいわ、本は読みたいわ。けど、なぜかニャについて考えているムーンデイの朝。お山はすっかり秋の気配です。

f:id:chazenyoga:20200917102339j:plain
どんぐりさん......