10月に四国八十八カ所の約半分くらいを歩き遍路で回ったとき、初めて外反母趾由来と思われる痛みを感じたり、膝が腫れたりしたのです。いずれも軽度で、翌日の歩きに影響はなかったものの、歩き方改革が必須とYouTubeなど見て研究をしていたのでした。
古武術の先生と箱根旧街道を歩くという企画に即刻手を挙げて参加したのはそういったわけです。初めて古武術の稽古会に行った日に、毎日自分で行う稽古について尋ねたところ、先生ご自身は裸足で砂利道を歩いたり跳んだりしているとのことで、試したいと思いつつ自分ではなかなか......。
とはいえ、まさか今回箱根をハダシで歩くとは思っていませんでした。それが、駅前の商店街を過ぎて旅館の立ち並ぶエリアに入るや、先生が靴を脱いだ! ビニール袋に入れてリュックにしまった! えー! ビニール袋持ってきてないし!
とびっくりマーク連発しながらも、反射的に自分も靴を脱いでいました。

最初のうちはアスファルトでよかったのですが、そのうちごく小さな小石のあるところや、凸凹したアスファルトが出てくると、足裏が痛い。いくら野生児の私でもハダシで外を歩くことはありませんから、足裏は箱入り娘のようなもの。小粒の石があんなに痛いとは......。
しかし、それはまだ序の口でした。旧街道へ入ると砂利道が続きます。

いたっ! いたたた!と、思わず口にして、とたんに失速。
靴を履いて歩いている人たちが「銭湯にある足ツボマッサージみたいなものですね?」などと涼しい顔で声をかけるので、「そ、そんなもんじゃねーよ、めっちゃいてーよ」と苦痛に歪んだ顔で答える私でありました。いやもうホントに痛いんですよ。私ってこんなに痛みに耐性なかったかなあと思うほど痛い。たとえて言うなら、心臓がキュッと縮み上がるような痛さなのです。
針のムシロってこんな?
これってサドゥーがするような苦行では?
あー、もうギブしよ。
と思いつつ、なぜか靴を履こうとしないワタシ。
ドMかよ。
それでも、どろんこあり、川ありのあと、石畳が出てくると、かなり快適に歩けるようになりました。スピードも、杖をついた老人から小走りまで上がります。

緑の美しい季節なのですが、景色を見る余裕はない。というか、ずっと下を見ている必要があるので見られないのです。
多くの人がハダシに挑戦した石畳エリアを過ぎてから、いったん靴を履いて休憩場所まで移動しお弁当タイム。再び歩き出したら、靴を履いて歩くのがちょっとキモチワルイ。ハダシの気持ちよさを味わってしまうと、靴を履くのがうっとうしくなるのです。
で、ガマンできずに再び靴を脱いでハダシになりました。特に石畳はがぜんハダシのほうが歩きやすい。最近足底筋を鍛えつつあるので、足裏の感覚も違って感じられます。
先生がところどころで歩き方のコツなど伝授してくださったのですが、休憩場所である甘酒茶屋にて質問すると、先生が答えながら砂利の上で跳ねてみせます。足裏ヒリヒリの私は目がテンです。しかし、慣れること、コツをつかむことで痛くなくなるのだそうです。がんばります。

その後もう一度脱いで履いて、芦ノ湖到着。痛みのせいか疲れは感じなかったのですが、靴を履くとき、ふくらはぎが攣りそうになりました。それでも10kmのほとんどをハダシで完走です。お遍路さんでは1日30km以上歩くので距離的には楽勝なのですが、ハダシで歩いたという特別な充実感がありました。
帰りはバスに乗って天山まで移動し、温泉で疲れを癒しました。
それにしても、もはや私の足裏は温泉の滑り止めマットでも痛い......(翌日は家のフローリングの上でも痛かった)。そして、残念ながら、足ツボ効果で整ったという実感はありません。苦行で悟りが開けた実感もありません。
ただハダシで歩く気持ちよさが身体に刻まれたことだけは確かで、その記憶を頼りにまたハダシで歩こうと思うドMなのでした。