夏の3ヶ月間お休みしていた観音部の遠足会ですが、10月の観音様の日から再開されました。
今回は、ご開帳となっている杉本寺のご本尊を目指しました。杉本寺は、2月の遠足会でも訪れております。ご本尊は秘仏で、本堂のなかの小さなスペースから金網越しに拝む体になっていて、でも中が暗くて見えず、ご開帳の折には......と思っていたところ、1年もたたないうちにその機会が巡ってきたというわけです。
本堂のなかには十一体もの仏像が祀られている
こちらのご本尊は三体の十一面観世音さま(うち二体が重文)です。写真撮影禁止なので、お見せできないのが残念です。
ご開帳の日は土日に限定されており、7人ひと組が観音さまの前に案内され、腰掛けて和尚さんから各仏像の説明を受けた後に、ご祈祷いただくというコース設定になっています。朝イチで行ったためか、さほど混んではおらず、すぐに案内されました。
やはり、ご本尊は際立っていました。気になっていたことがひとつクリアになったようで満足です。ただ、固定された位置からしか眺められないのが残念ではありました。
杉本寺は鎌倉の中でも古くて、茅葺き屋根と苔に象徴される趣深いお寺です。
美しい......
実は2月のときに、帰ってきてから杉本寺でいただいた栞を見て驚きました。当山奉安仏として「運慶作」と書いてある仏像が三体もあるではないですか!
私はいったいどんな「ふし穴の目」で拝観してきたのだろうと思って、その後ひとりでもう一度拝観しに行きました。ところが、素人が見てもそのようには見えません......。調べてみると、どうやら「伝」のようです。つまり、お寺には運慶作と伝わっているけれども、実際にはそれよりずっと後代に作られたものであろうというのが通説のようです(栞には「伝」の文字が入っておらず、「運慶作」とだけ書いてあります)。
世の中に観音像は数多くありますが、私が「遠くまで出かけてでもお目にかかりたい!」と思うものは、実はそれほど多くはありません。どうしてだろうとなんとなく思っていたら、昨日読んでいた白洲正子の本に答えが書いてありました。
ここに揚げた六十三体のうち、円空だけははるかに時代がはなれている。その何百年かの空白の時代にも、観音像は数多く作られたに違いないが、いずれも形式的な魂のぬけたものばかりである。信仰のないところに名作は生れない。
白洲正子「観音巡礼」 毎日新聞社 より
さすがは目利きの正子さんです。自分の足で歩いて、自分の目で見て、肌で感じた経験が豊富だからこその心眼ともいえます。
「形式的な魂のぬけたもの」は、世の中には多いです。むしろそれで社会が成り立っているような気がします。
仏師の力はもとより、その観音さまをどのように祀り、どのように拝んできたかという歴史が、ただの彫刻を、ほんものの観世音菩薩にするのだろうと思います。5月に湖北で拝観してきたもろもろの仏像は、その意味でまさしくほんものの観音さまになった仏像でした。観音さまに魂を入れるのは、儀式的なものではなく、その観音さまを信仰する人々の心なのでしょう。
さて、杉本寺を下りてから「天園ハイキングコース」を歩いて北鎌倉に出るというコース設定をしました。登山口はいくつかあるのですが、明王院の近くから入ることにしました。せっかくなので明王院にもお参りしていきます。
静かな、落ち着いたお寺です。ご本尊が不動明王らしいので(それで明王院か)、書いてあった不動明王真言を一同でお唱えしました。
こちらも茅葺き屋根で、趣ある佇まい
明王院の隣からハイキングコースに入ると、いきなり急勾配の登りです。ハイキングコースはいくつもの分岐がありますが、ここはGoogleマップにも出ていないマイナーな登山口なので、われわれ以外には誰も歩いていません。
毎度のことですが、ワタシ的にはフツーの散歩道が、都会人の参加者たちにとってはすごい山道に感じられるらしく、これがハイキングコース? とか、これってけもの道じゃない? とか、とりあえず驚かれます。
そうは言いながらも、みなさん楽しそうに歩いていました。景色も開けない山道なので、黙々と足を運びます。
急登は最初だけで、あとは比較的ゆるやか
ある地点からハイカーがどんどん増えて、すれ違うために道を譲り合うことが多くなりました。多くの人が北鎌倉方面から登ってきて鎌倉へ降りるようで、それがスタンダードだとすると、われわれは「逆打ち」です。ツアーグループもいて、手軽な登山が楽しめるのが人気の天園ハイキングコースです。
大平山の頂上でお昼にしました。今回は、鎌倉駅から杉本寺に行く途中に魅惑的なパン屋さん「モン ペシェ ミニョン FUJIMORI」があるので、そこに寄ってランチを調達。歩いたあと、外でいただくお弁当は最高です。他愛もないおしゃべりをして笑い、建長寺を目指して再び歩きます。
建長寺が近くなったころに、見晴らしのよい場所が現れます。その昔、足繁く通った鎌倉の海をみると、ある種のなつかしさが込み上げます。
八幡宮からまっすぐ伸びた道が海へとつながる
その先はもう建長寺の敷地です。建長寺はだいぶ高いところまであり、観光も寺院も歩きも楽しめるお寺です。建長寺を上から拝観していきます。
法堂には大きな千手観音さまが
観音遠足なのに、迂闊にも建長寺にいらっしゃる観音さまのことを忘れておりました。メジャーすぎてわかった気になっていたという......。
ともあれ、お天気に恵まれて、気持ちのよい遠足日和でした。
ゴルフ場みたいな庭
しかし、日差しの強い、暑い日だったので喉がカラカラ。近くのカフェに入ってひと休みして、まだ15時すぎなので、東慶寺で水月観音さまを拝んでフィニッシュ......のつもりが、なんと水月観音さまの拝観は15時まででした。お茶してなければ間に合ったのに。
それでも、たいへんすがすがしい気分の残る観音遠足会でした。観音さまに会えたからでしょうか。無駄なおしゃべりをやめて、黙々とただひたすら歩いたからでしょうか。そして、心地よい疲労感を全員で共有したからでしょうか。
よくわかりませんが、この日、この遠足会に、なにか特別なエネルギーが出ていたのを感じました。そうして、そのエネルギーがまた来月結実しそうな成り行きです。
(一部の写真は参加者撮影のものを提供いただきました)