アシュタンガに限らずヨガは空腹状態で行うものですが、たまに「お腹が空きすぎて動けない」とか「力が出ない」ので何か食べていいか聞かれることがあります。基本的にはNO! なのですが、そこには体質や、なんらかの問題が関係していることもあるので、即否定はせずに慎重に答えるようにはしています。
けれども、やっぱり答えはNO! になります。それにはさまざまな理由がありますが、「食べない」こともまたヨガのひとつの練習だと考えるからです。ヨガで学ぶことは、足し算よりは引き算です。「どれだけ多くのことを為すか」ではなく「どれだけ為すことを少なく、よりシンプルにするか」ということです。
こんなことはもし飢えた時代ならとても言えませんが、現代人の多くは栄養過多です。それなのに、健康になるためにさらに何かを摂ろうと一生懸命になっていたりします。ヨガは一般の常識とは違うところからアプローチすることで、何らかの効果を得ることだと思うので、「食べないといけない」という観念を疑うことも大事です。
まずは、食べないことがどういう結果をもたらすか、朝練の中で体感していってほしいと思います。もし食べないから動けない(ポーズをやる力が出ない)のであれば、それでもいいのです。何か食べてガンガン動く練習をするなら、それはヨガではなくエクササイズやスポーツです。ヨガの練習であれば、何も食べないで力が出ないから坐って呼吸だけっていうこともアリなのです。
ヨガ生活が長くなると、食べないことに慣れてきます。そして、食べないことのメリットをさまざまに感じることができます。三食信仰が根強い人は一食でも抜くと大騒ぎします(私もそうでした)が、洞窟に閉じ込められたタイのサッカー少年たちを見てもわかるように、人は十日間何も食べなくてもそう簡単に死んだりはしないんですよね。
内容的にどういう食事がいいのかは人それぞれ体質が違ったり、そのとき抱えている不調や条件によっても異なるので、絶対的なおすすめなど存在しません。単に食べなければいいというわけではありませんが、それでもヨガで目指すのは「より少なく」の方向になると思います。
インド思想の座学ではよく、マインドセットを入れ替えることがインド思想のキーポイントだと言っているのですが、食べることに関しても同じかもしれませんね。
ただし、極端なダイエットをすすめているわけではありません。そして、食事を少なくして甘いものばかり食べたり、お酒だけ飲むようなことは、ここで述べた「より少なく食べる」ことにはなりませんので要注意です。
それから、食べないことを推奨する私は、ごはんもりもり食べている凡夫ですので、どうぞご安心を。(ほとんどの人はよくご存知かと思いますが)
最近のヒットは恵比寿の板蕎麦。お蕎麦もおいしいけど、なんといってもごはんのサービスがうれしい私なのでした。