仁義なき戦い
昨年から禅やインド思想のクラスに参加するようになったO嬢は、その影響で、実家に帰れば家族から「仏様のようになった」と言われ、学会発表に際しても緊張することなく、いじわるな質問にもさらっと対応できるようになったという、気づきの名人である。
O嬢はちくちくと手縫いするのが好きで、応量器を包む袱紗や膝掛け箸袋などをすべて自前で作ってしまうちくちく名人でもあるのだが、先日の星覚さんのワークショップのときに、参加者みなさんのために箸袋を縫ってきてくれたのだった。
ほんとに仏に近づいてます。
今回縫ってくれたのは、さまざまなハギレを使ったひとつひとつ色柄が違うもの(写真撮っておけばよかった)。柄物なのでお寺では使えないけれど、縫い方の仕様は本物と同じでとてもしっかりした作り。日常マイ箸を持ち歩くときなどにも活躍しそうだ。
これだけでも十分ネタになるのだけれど、本題はこれから。
箸袋の数はそこにいた人数マイナス2、そして、すべて色柄が違う。
......ときたら、ザ・サンパチだよね!
禅の旅や星覚さんワークショップに参加したことのある方にはおなじみのサンパチじゃんけん。「サンパチ」とは、永平寺で3と8のつく日に行う、いつもより念入りなお掃除のこと。星覚さん修行時代のサンパチのエピソード(ここでは公にできませんが)にちなんで、いただいたものを分ける儀式......というかゲーム。
- まず対象の景品を並べる。
- 数が十分あるときはわざと偏りがあるよう配分して、豪華なセットと貧弱なセット、あるいはハズレをつくる。
- 「いっせーのせ」で自分がほしいものを指差す。
- 1セットに対して指差した人がひとりの場合は即ゲット。複数いた場合はじゃんけん勝負。
- というのを景品がなくなるまで繰り返す。
これをやると必ず、かち合った人どうしで「どうぞどうぞ」と譲り合う光景が見られるが、それはルール違反。いったんこのゲームに参戦した以上、戦って勝敗を決めねばならぬ。
いやしくも仏さまの教えを学ぶ場で繰り広げられる仁義なき戦いなのである。
で、このときいちばんはりきって欲を出しまくるのが、主催側の二人。
喧嘩上等なちゃみこさんはわかるとしても、人と争うことが嫌いでいつもおだやかな星覚師までも!
かくして、私もいいなと思ったシックな柄の箸袋はじゃんけん争いとなった上で、星覚師がゲットした。箸袋なんざいくらでもお持ちの星覚師だが、ちゃっかりいちばんの人気柄を奪っていきやがったぞ。何ももらえずに終わった人も一名いたが、もちろんあとで譲ったりもしない。
それが掟さ!
「作法なんて難しそう」と参加をためらった方には申し訳ないが、こんなことで大いに盛り上がったワークショップであった。道元禅師が見たら嘆かれるか。でも、ダライ・ラマ猊下だったら参戦するかもしれないな。
さて、私が獲得したのはブルーのパイナップル柄箸袋。縫い目の美しさにホレボレする逸品。隣にあるのが仏具屋さんで調達した箸袋と応量器一式。
「人生フルーツ」のツバタ家では、買ったものを贈らないと決めているのだそう。おいらもそうしよう!と、10月ごろエコたわしづくりにトライしてみたが、どうやっても糸が割れてしまって鎖編みより先に進めず......。
誰にも何も贈ることができない私であった。