雑木林......
柳生博さんの訃報に少し驚いた。ちょうど亡くなる前日に八ヶ岳倶楽部でお茶してきたばかりだ。そのとき、なんとなくなのだけど、別段変わったことはないのに、寂しいような侘しいような(オフシーズンだからではなく)なんともいえない雰囲気を感じていたから。
素泊まりしたペンションには私たち以外に宿泊者はいなくて、ラウンジやダイニングが貸し切りだった。テレビをつける気にもならず、薪ストーブに当たりながら「八ヶ岳ライフ」「八ヶ岳デイズ」という雑誌をめくったら、連載されていた柳生さんのエッセイが味わい深くおもしろいので、バックナンバーを片っ端から読んだりしていた。
私は八ヶ岳方面にはぜんぜん詳しくなくて、八ヶ岳倶楽部のこともよく知らなかったのだけど、初めて行ったときに美しく整えられた敷地内の雑木林に魅せられた。
この連載の中で柳生さんは、雑木林は文字通り雑木だからいいのだと言われていた。杉や松は植林された人工的な森なのだというようなことも書かれていた。
おっしゃる通りです。軽井沢の分校はまさしく、その植林した松と杉の山にあった。カラマツの匂いは好きだし、嫌な印象などなかったけれど、庭に大きな松があると、それだけで視界が遮られて夜空の星がよく見えないとか、松ヤニで屋根が汚れて高圧洗浄に5万円もかかるとか、住んでみなければわからない問題がたくさんあると知った。
そして、森は放っておいたらただのジャングルになることも知った。定期的に間伐して整えてこそ、美しい森の姿を保ち続けられるものなのだ。そういうことがわかった今は、柳生さんがどれだけこの雑木林を愛し、手をかけて美しい森に育ててきたのかもわかる。
ほんとうに、世の中には自分の知らない、けれどとても大事なことがたくさんある。そして、人には他の人にはわからない苦労がたくさんある。60年生きてようやく、ほんの少しだけそういうことがわかってきた。人生は短い......。
ところで、前に八ヶ岳倶楽部に行ったとき何を書いたか忘れていたのだけど、猛烈なにわか雨に遭遇して何もできなくなり、ここに駆け込んだことを思い出した。そして、そのときに瞑想状態になったこともブログを見て思い出した。
もしかしたら、ここには何か不思議なエネルギーが流れてるのかも。
すてきなインスピレーションをいただきました。柳生さんありがとうございます。ご冥福をお祈りいたします。
15歳のころは、まだまだ若かったシュー太郎氏。
今回は寒かったのでテラス席は作られてなく、あのとき「空きましたからどうぞ」と言われたサンルーム的なスペースでハーブティをいただいた。
もひとつオマケ。
豪雨で外に出られなくて悶々とする私を笑うシュー太郎氏。
4年後......